合理主義ユマニストとしてのブッダ-今枝由郎先生講演レポート

合理主義ユマニストとしてのブッダ-今枝由郎先生講演レポート

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最終更新日:2017-12-05

11月18日(土)、2017年度公立鳥取環境大学学内特別研究費助成研究に採択された「中国青海省・西蔵自治区のチベット仏教僧院に関する予備的調査研究」(代表者・浅川滋男)の一環として、第3回仏ほっとけ会(ほとけほっとけえ)を開催しました。このたびの第3回はチベット・ブータン仏教史の大家、今枝由郎先生(京都大学こころの未来研究センター特任教授)をお招きして、「ブッダが説いたこと」と題する講演をしていただきました。地元鳥取だけでなく、島根・広島・岡山・兵庫など近隣諸県からも多数の参加者があり、80名以上の聴衆が講演を楽しまれました。
講演は『池上彰と考える 仏教って何ですか?』(飛鳥新社・2012)の引用から始まりました。池上氏によると、日本人は仏教を非常に複雑で暗い、つまりネガティブな宗教として捉えていると指摘しています。ところが一方、欧米の知識分子はむしろ仏教を非常にポジティブな知的財産として高く評価しています。たとえば、ニーチェは「仏教は歴史が我々に提示してくれる、唯一の真に実証科学的宗教である」、アインシュタインは「仏教は近代科学と両立可能な唯一の宗教である」と述べています。
こうした日本(東洋)と西洋の認識の異なりは、どこから来るのでしょうか。それは「お経」にあるのではないか、と今枝教授は考えられたようです。日本の仏教は「葬式仏教」とも揶揄されるように、お経に接するのは喪に服する法要のときのみです。僧侶の導くまま訳のわからぬ念仏を唱えるだけで、お経に書かれている内容については誰も分からない。僧侶もまたお経を暗唱しているにすぎないのです。仏教国であるはずの日本の仏教は、少なくとも民衆レベルでは形骸化している。

 

ブッダが逝去して今に至るまで長い時間が流れ、伝承としてのブッダの言葉は成文化し、注釈され、漢訳されて難解な経典に変わりました。難解になりすぎて遂には意味のとおらぬ漢字の羅列になったと言っても言い過ぎではないかもしれません。こういう実態に疑問を抱いた今枝教授は古代インドの仏典を自ら読みこみ、その意味を理解しようと考えられました。今に残る最古の仏典「スッタニパータ」「ダンマパダ(法句経)」を日常の用語だけ使って自ら翻訳されたのです。驚いたことに、そこに書かれた内容はシンプルで明快なメッセージばかりです。「良い友達を作ろう」「命をたいせつにしよう」「楽しい人生を送ろう」など、難解な漢籍仏典との距離が大きすぎて唖然とするばかりです。仏典の英訳を読んだ欧米知識分子がシンプルで明晰な古代インド仏典に心酔したゆえんでしょう。
ポジティブで理解しやすい古代インド仏典は科学者・哲学者だけでなく、欧米の経営者・起業家などの座右の銘ともなり、「成功者のバイブル」と呼ばれるようになりました。人が社会で上手に生きていく上でメンタルをコントロールし、トラブルに巻き込まれないエッセンスが凝縮されているからです。Appleの創業者スティーブ・ジョブズは仏教から経営の極意を学んだ代表者としてよく知られています。
紀元前5世紀の社会を生きたブッダは、崇高に神格化された宗教を極めようとしたのではなく、人間の人生を楽しく生きることを突き詰めて考えた「合理主義ユマニスト」であったというのが今枝教授のお考えであり、従来のブッダのイメージを大きく覆すものです。今枝教授は以下の著書3冊を本学情報メディアセンター・市立図書館・県立図書館に寄贈されました。古代インドの仏典が大学の教職員・学生・市民・県民の人生をポジティブに軌道修正する触媒となるであろうことを期待されてのご恵与と拝察いたします。心より感謝申し上げます。

 

【今枝先生からの寄贈本】
ワールポラ・ラーフラ(今枝由郎訳)『ブッダが説いたこと』岩波文庫、2016
今枝由郎訳『新編 スッタニパータ ブッダの〈智恵の言葉〉』トランスビュー、2014
今枝由郎訳『ダンマパダ ブッダの〈真理の言葉〉』トランスビュー、2013

 

関連リンク先(浅川研究室ブログ):http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1645.html

 

 

講演される今枝教授講演される今枝教授
講演に聴き入る聴衆(県民ふれあい会館)講演に聴き入る聴衆(県民ふれあい会館)
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